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NIPT実施”認可”施設の拡大見送り、今後どうすればいいの?

NIPT実施「認可」施設の拡大見送り、今後どうすればいいの?

2019年6月、日本産科婦人科学会より新型出生前診断の検査拡大の指針が示されました。
今回の記事では、新型出生前診断の検査が行える施設の拡大を見送った流れや理由、検査を受ける側である妊婦がこれからどう対処していけばいいのかを解説します。

新型出生前診断の新指針とは

日本産科婦人科学会から「母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針」が2019年6月に新たに示されました。*1この新しい指針では、検査を受ける必要のある妊婦が、不安なく公平に適切な検査が受けられるように考慮された内容になっています。これまで認可施設での検査が推奨されてきましたが、認可施設を基幹病院・連携病院と対象を広げて、出生前診断などについての研修を受けた産婦人科医がいる施設でも、NIPT検査が受けられるなどといった内容が組み込まれています。

なぜ新指針が出されたのか

それでは、なぜそのタイミングで新指針が出されたのでしょうか。その背景には、検査を受ける妊婦が増えてきたこと、認可施設以外にも検査が行われるようになったことなどが挙げられます。2013年、日本で新型出生前診断の検査が始まり、認可施設は当初は15施設から92施設(平成30年7月時点)と増えました。*2検査の開始から妊婦が安心して受けられる体制も少しずつ整い、必要な妊婦には検査と一緒に出生前カウンセリングも行われています。2016年度末までの4年の間で、合計52,490人の妊婦が出生前カウンセリングを受け、そのなかから48,643人がNIPT検査を受けたとの報告もあります。*1最近では認可されている施設以外での医療機関で、検査を受ける妊婦も少なくありません。*3そのような状況で、高齢妊婦が増えていること、検査が必要な妊婦が認可施設に地理的な問題でアクセスしにくい場合もあること、十分な出生前カウンセリングがより求められることなどの問題点もあり、新指針が出された背景があります。

どんな新指針だったのか

日本産科婦人科学会の新指針では、新型出生前診断検査にのぞむ妊婦やその家族に対して行う出生前カウンセリングの必要性や意思決定を支える体制の重要性をより強調しています。さらに「不特定多数の妊婦を対象としたマススクリーニング」として検査を行うのではなく、個々のさまざまな状況をしっかりと判断して、慎重に実施すべきという姿勢は変えていません。一方で、これからより増えていく高齢妊婦の不安を軽減したい気持ちや認可施設が限られていることから妊婦が住む地域や仕事などによって検査が受けにくい状況となってしまうことも「好ましくない」としています。*1

要件が整った基幹施設・連携施設の整備

新指針では、要件をクリアした「基幹施設」とその「連携施設」で検査が行えるよう、施設の拡大を図っています。加えて、検査後の出生前カウンセリング・その後の検査や観察・妊娠中断の可否や処置などは基幹施設で行うことも定めました。しかし、妊婦が住む地域によって基幹施設への通院が難しいときには、検査結果の解釈に関わる出生前のカウンセリングを連携施設で行えるように柔軟性を持って記しています。基幹施設・連携施設となる条件でも、出生前診断の知識や診療経験が豊富な産婦人科医師、小児科医師、遺伝カウンセラー・遺伝看護専門看護師の配置などを定めています。新指針で予測されることとは新指針で示された案では、妊婦が出生前診断検査をより受けやすくなるメリットがあります。これまで妊婦が住む地域に認可施設がなく、検査が受けにくかった妊婦も検査が行える施設が増えることでより受けやすくなるという状況になるのです。しかし検査が受けやすくなることで、検査結果によっては妊娠の中断を選ぶ妊婦が増えることも懸念されています。

NIPT実施施設の改定案について妊婦の意見は?

新指針については、様々な意見が寄せられたようです。日本産婦人科学会は、2019年3月に「Babyアプリ」ユーザーに対してWebアンケートを行いました。(回答数6,859件)そこでは、NIPTや指針改定案に対して多くの前向きな回答が寄せられています。約90%近くの人が日本でNIPT検査を行うことに対して前向きであり、約80%が検査を受けるときには「産婦人科の専門医」に相談したいと回答をしています。さらに、80%以上の人がNIPTの実施対象施設が増えるのに前向きであり、約70%の人が日本産科婦人科学会の改定案に賛成、反対は全体の5%となっています。

新指針の運用開始は保留に

妊婦にも新指針に前向きな意見が多かったものの、厚生労働省母子保健課からの要望書やほかの関連する学会の同意が得られなかったことなどにより新指針の運用は保留となります。*5 *6今後は、厚生労働省で行われる議論を見守ることになったわけです。そこで新指針が運用が始まるまでは、これまでの指針に沿って検査を行うことが勧められています。*7

今後の新型出生前診断の指針の行方は?

新指針では、検査が受けられる施設が広がり、妊婦がより検査を受けやすくなる一方で、出生前カウンセリングが十分に行えない可能性やほかの懸念が他の学会にあり、それらの混乱や妊婦の不安を生まないために、国が先に対応したとも考えられます。新指針が今後どうなるのか分からない状況とはいえ、今ある指針に沿った検査体制が望まれる状況であることは変わりありません。しかし、その上で本当に検査を受ける必要のある妊婦に等しく検査が受けられる機会を損なわないような体制や十分な支援が受けられる環境の整備がより求められています。

新型出生前診断を受ける妊婦はどうすべき?

新指針の運用開始がいつになるか分からない状況では、基本的には妊婦はこれまでの指針にそった検査を受けることが望ましいです。新指針でも指摘があるように検査を受けるときには、検査前後に十分な説明と必要なときに出生前カウンセリングを受けることが重要であることを引き続き認識する必要があるでしょう。なぜ自分にNIPT検査が必要なのか、検査の結果について夫婦でどのように考えるのかを事前によく把握した上で検査を受けることが大切です。さらに、検査が陽性となった場合には、胎児への治療や障害を持つ子どもの未来・社会の支援体制なども知り、学んでおくことも欠かせません。ただし、それらの医学的な情報を夫婦だけで調べて理解するには限界があります。検査を受ける前や後に、正しい情報が得られる環境や検査体制が整った施設での検査も考慮すべきでしょう。認可施設やそれ以外の施設での検査であっても、検査の意義や結果の解釈について十分な認識を持って受けること、そして適切な出生前カウンセリングを受ける必要性の認識が検査を受けるすべての妊婦に求められます。今回の新指針の運用見送りは、妊婦としてこれらの心構えが大切であることを再度認識できる機会にもなったともいえるでしょう。

まとめ

今後妊娠を希望する女性はNIPT検査に関わる指針など、国の動向について注視する必要があります。将来もし新指針が運用開始となれば、検査を受ける状況も大きく変わることが予測できるからです。従来の指針のままであっても、新指針となったとしても、検査を受ける妊婦が安心・安全に検査が受けられることをまずは優先して考えることをお勧めします。

参考文献