代表的なネオアンチゲン
この記事の概要
ネオアンチゲンはがん細胞に特有の変異から生じるペプチドで、個別の免疫反応を引き起こすものとして非常に注目されています。以下は、既知のネオアンチゲンペプチドのリストです。これらは、さまざまな遺伝子変異から生じたものであり、がん治療におけるターゲットとして報告されています。ペプチドのアミノ酸配列と、それがどの遺伝子変異から派生しているかも示します。
ネオアンチゲンの例リスト
ネオアンチゲンペプチド | 元の遺伝子変異 | がん種 | 説明 |
---|---|---|---|
YVGDGAFGV | KRAS G12D | 大腸がん、膵臓がん | KRAS遺伝子のG12D変異によって生じたペプチド |
HMTEVVRHC | TP53 R175H | 乳がん、肺がん | TP53のR175H変異に基づくネオアンチゲン |
TLDSVVFGGE | BRAF V600E | メラノーマ、大腸がん | BRAFのV600E変異によって生成されたペプチド |
GLDIDPYYI | EGFR L858R | 非小細胞肺がん(NSCLC) | EGFRのL858R変異によるネオアンチゲン |
KLVVVGAGGV | KRAS G12V | 膵臓がん、肺がん | KRAS遺伝子のG12V変異によるペプチド |
RGDAGGVGKS | NRAS Q61K | メラノーマ、甲状腺がん | NRASのQ61K変異から生成されるネオアンチゲン |
GILGFVFTL | MAGE-A3 | 様々な固形がん | がん・精巣抗原であり、MAGE-A3由来 |
QYIKWPWYI | NY-ESO-1 | メラノーマ、肺がん | がん・精巣抗原であるNY-ESO-1から派生 |
SLLMWITQC | WT1 | 白血病、胸膜中皮腫 | WT1(Wilms腫瘍抑制遺伝子)由来 |
FLYLGGSGAF | KRAS G13D | 大腸がん | KRASのG13D変異によるネオアンチゲン |
KVAELVHFL | BRAF D594V | メラノーマ | BRAF遺伝子のD594V変異によって生成されるペプチド |
AARAVFLGG | PIK3CA E545K | 乳がん、肺がん | PIK3CAのE545K変異に由来 |
SPETWNRIDK | FGFR3 S249C | 膀胱がん | FGFR3(線維芽細胞増殖因子受容体3)のS249C変異 |
RRYQSLAPA | HER2 (ERBB2) V777L | 乳がん、胃がん | HER2のV777L変異によるネオアンチゲン |
ILKEPVHGV | IDH1 R132H | 膠芽腫、白血病 | IDH1(イソクエン酸脱水素酵素1)のR132H変異 |
GADVRDSMA | CTNNB1 S45F | 肝細胞がん | βカテニン(CTNNB1)のS45F変異から生成されたペプチド |
MLGFVARHG | FLT3 ITD | 急性骨髄性白血病(AML) | FLT3の内部タンデム重複(ITD)変異に基づくネオアンチゲン |
YMPMFPTS | JAK2 V617F | 骨髄線維症、PV | JAK2のV617F変異から生じるペプチド |
LPQFDFDYI | CTLA-4 | 様々ながん種 | CTLA-4阻害による免疫反応促進を標的とするペプチド |
SYYRYGAAL | PD-1 | 様々ながん種 | 免疫チェックポイント阻害療法に関連するPD-1抗原由来 |
ネオアンチゲンの由来
ネオアンチゲンは、患者の体細胞変異から生じるもので、その生成には以下のような遺伝子が関わることが多いです:
- KRAS: 多くのがん(大腸がん、膵臓がん、肺がん)で見られる変異がネオアンチゲンを生み出します。
- TP53: がん抑制遺伝子であり、広範囲のがんにおいてミスセンス変異が発見されており、それに由来するペプチドが免疫系に認識されやすいです。
- BRAF: 特にメラノーマや大腸がんで頻繁に報告されるV600E変異がネオアンチゲンの代表例です。
- EGFR: 非小細胞肺がん(NSCLC)におけるL858R変異などが、治療のターゲットとなるネオアンチゲンを生成します。
まとめ
ネオアンチゲンは、がん細胞に特有の遺伝子変異によって生じる新しい抗原ペプチドであり、T細胞による免疫応答を引き起こす潜在力があります。これらのネオアンチゲンは、がん免疫療法やワクチン開発において非常に重要なターゲットとして注目されており、個々の患者のがん細胞の遺伝子変異に基づいてパーソナライズド治療が行われます。