先天的病気を支える集団外来
新型出生時診断(以下NIPT)が全国で普及していくなかで、子どもの先天的病気に不安をもつ家族を支える医療の取り組みが期待をされています。
今回は先天的病気を持って生まれた赤ちゃんとその家族を支える「集団外来」についてご紹介します。
目次
「これから生まれてくる赤ちゃんにダウン症などの先天的な病気が見つかったら、どうすればいいのか...」
妊娠の喜びとともに、妊婦さんにはそんな不安がよぎることもあります。
新型出生時診断(以下NIPT)が全国で普及していくなかで、子どもの先天的病気に不安をもつ家族を支える医療の取り組みが期待をされています。
今回は先天的病気を持って生まれた赤ちゃんとその家族を支える「集団外来」についてご紹介します。
先天的病気とは?
はじめに先天的病気とはどんな病気をさすのでしょうか。
先天的病気とは、赤ちゃんが生まれたときから持っている病気のことです。
その病気には以下のような分類に分けてとらえることができます。
- 染色体の変化(先天性疾患全体の約25%):ダウン症候群、18トリソミー、13トリソミー
- 遺伝子の変化(全体の約20%)
- いろいろな要因が影響している(全体の約半数):先天性の心臓疾患
- 催奇形因子・環境因子が影響している(全体の約5%):薬剤・タバコ・アルコールなど
これらの先天的病気の分類があるとはいえ、赤ちゃんが生まれたときにわかる病気は一部のみです。
赤ちゃんが成長してから病気がわかることもあります。
もちろん、病気や障害があっても、それをその子の特徴のひとつとして考えることが大切です。
母体血胎児染色体検査(NIPT)でわかる先天的病気
赤ちゃんの先天的病気のうち、21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー・13トリソミーは出生前遺伝学的検査の一つであるNIPTで陽性・陰性・判定保留の確率を調べることができます。
この検査では妊娠10〜18週に採血で調べることができ、お母さんにとっても非侵襲的な検査であることが特徴です。
NIPT後に相談できる団体
NIPTを受ける前や受けたあとでは、遺伝カウンセリングを受けることが望ましいとされています。
なぜなら、NIPTの結果によっては妊娠継続を悩む両親もおり、その後の心理的サポートや心配ごとへの対処法を専門家とともに一緒に考える機会が必要だからです。
また遺伝カウンセリング以外でも「NPO法人親子の未来を考える会」のように、NIPTを受ける家族がどのような幸せを選択するのかをサポートする機関もあります。
このNPO法人では、NIPTの検査や結果、赤ちゃんの病気について無料で相談できるサービス「ゆりかご」なども運営しています。
集団外来とは?
NIPTを受ける前にぜひ知っておいてもらいたいのが、たとえ赤ちゃんにダウン症などの障害がわかったとしても、両親や生まれた赤ちゃんのための医療・福祉のサポートがあるということです。
そのなかでも主に病院が行う集団外来では先天的疾患として多く見られるダウン症の乳児や家族のためのサポートを行っているところが多いといえるでしょう。
集団外来では、個別の外来だけでは対応できないダウン症告知をされたあとの総合的な子どもの発達や子どもや家族絵の心理・社会的サポートをグループに対して行なっているのが特徴です。
集団外来で行われること
集団外来では、0〜3歳くらいまでのダウン症の子どもと家族が対象となるダウン症候群の早期療育が行われています。
乳児期早期の半年間〜1年間のコースが中心で、提供する病院によりコース内容も異なります。
どの集団外来においても、事前に遺伝科外来の受診が必要になるところがほとんどです。
さらに集団外来では、子どもと家族に向けての情報提供だけでなく、家族交流の機会にもなっているところが特徴です。
月1回の半年間〜1年間のプログラムであるところが多く、医師・認定看護師・認定遺伝カウンセラー・臨床心理士・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・栄養士・ソーシャルワーカー・保育士・歯科衛生士などがダウン症の赤ちゃんの発達を促すプログラムを提供する体制になっています。
- 健康管理(眼科・耳鼻科・整形外科・循環器科)
- 運動発達・リハビリテーション
- 医療福祉情報(利用したいサービス・施設など)
- 食べる機能の発達と歯の健康・哺乳と摂食アドバイス
- 遊びとコミュニケーション
- 子育てフリートーキング・保護者のための学習会
- 地元の療育・教育機関の情報
- 遺伝相談
これらの内容がプログラムに取り込まれ、ダウン症の子どもや家族へ提供されています。
集団外来がある病院
国内では以下のような病院にダウン症児と家族のための集団外来が設置されています。
集団療法のあるクリニック
多くの病院や施設において、医療者に加えてボランテイアで運営されているところも多く、数としても全国では数少ないと言わざるを得ません。
集団外来に期待されること
ダウン症児や家族が集団外来に参加することで期待される効果のひとつとして、ダウン症児や家族同士が交流をすることで家族の孤独感や不安感が軽減できることが挙げられます。
さらに、集団外来のプログラムを通してダウン症候群への理解と子育てへの姿勢も促進され、子どもの障害に対する肯定と否定の気持ちを経て、障害の理解と受容を進む手助けにもなるでしょう。
そのような意味においても、ダウン症児と家族における集団外来に参加をする意味は大きいといえます。
またダウン症候群以外の先天的疾患を持った子どもと家族に対する支援もダウン症集団外来と同様に必要です。
しかし、全国的にみてもその数は少なく、埼玉県立小児医療センターの集団外来(先天異常症候群)などが設置されています。
まとめ
NIPTで先天的病気の確率がわかるからこそ、NIPTを受ける前にダウン症などの先天的病気を抱えた子どもやその家族に対する集団外来をはじめとしたサービスや医療・保育・療育支援があることを知っておくことが大切です。
それらを知った上でNIPT検査を受けることでNIPT検査結果を受けたあとの適切な情報の取得と意思決定、さらに不安を和らげることに役立つでしょう。
ダウン症候群の疾患や集団外来などのサポート体制の理解や情報、どんな支援があるかを知った上でNIPT検査を受けることが何より重要です。
今後ますます集団外来が増え、その存在をNIPTを受ける妊婦が知ることのできる体制づくりが求められているといえます。