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BARD1遺伝子

BARD1遺伝子BRCA1 Associated RING Domain 1)は、BRCA1遺伝子と相互作用するタンパク質をコードする遺伝子で、DNA修復がん抑制において重要な役割を果たしています。BARD1とBRCA1の相互作用は、特にDNAの二重鎖切断の修復において重要であり、細胞の遺伝的安定性を保つのに寄与します。

BARD1遺伝子の役割

BARD1遺伝子がコードするBARD1タンパク質は、BRCA1タンパク質とともに機能することで、以下の重要な役割を担っています。

  1. DNA修復:
  • BARD1は、BRCA1と複合体を形成し、主にホモロガス組換え修復(HRR)という正確なDNA修復プロセスに関与します。これは、DNAの二重鎖が切断された際に、損傷を修復して遺伝情報の正確な再生を可能にするための機能です。
  1. 細胞周期の制御:
  • BARD1はBRCA1と共に、細胞が異常なDNAを複製する前に細胞周期を停止させる働きがあります。これにより、DNA損傷が修復されるまで細胞分裂を抑制し、がん化のリスクを低減します。
  1. アポトーシス(細胞死)誘導:
  • BARD1は、損傷が修復できない場合、アポトーシスを誘導し、異常な細胞が生き残ることを防ぎます。これもがん抑制の一環です。
  1. タンパク質分解:
  • BARD1は、ユビキチンリガーゼの一部として機能し、不要になったタンパク質の分解を促進します。このプロセスは、細胞内でのタンパク質の質管理と正常な細胞機能維持に不可欠です。

BARD1遺伝子の変異とがんのリスク

BARD1遺伝子の変異は、DNA修復機能の低下を引き起こし、がんの発生リスクを増加させます。特に、BRCA1遺伝子との関連が強いため、乳がん卵巣がんのリスクが増加することが知られています。

1. 乳がん

  • BARD1変異は、BRCA1/BRCA2変異と同様に乳がんのリスクを高めることが知られています。BARD1遺伝子の機能が失われると、DNA損傷が適切に修復されず、細胞のがん化を引き起こしやすくなります。

2. 卵巣がん

  • 卵巣がんのリスクも、BARD1遺伝子変異によって増加します。BRCA1と同じ修復経路に関与するため、BARD1の欠陥は同様に卵巣がんの発生につながることがあります。

3. その他のがん

  • BARD1遺伝子の変異は、肺がん子宮がんなど、他のがんにおいてもリスク因子であることが示されています。

BARD1遺伝子の診断と治療

BARD1遺伝子の変異は、遺伝子検査で診断されることがあります。特に、家族歴や遺伝性乳がん・卵巣がんのリスク評価の一環として検査が行われることがあります。

  • 診断: BRCA1やBRCA2と同様に、BARD1の変異は、家族性乳がん・卵巣がん症候群の一部として評価され、がんリスクの予測に使用されます。
  • 治療: BARD1変異がある場合、乳がんや卵巣がんに対して予防的手術や早期スクリーニングが推奨されることがあります。また、PARP阻害剤のようなDNA修復に関わる分子標的治療が適応される場合があります。

まとめ

BARD1遺伝子は、DNA修復細胞周期の制御において重要な役割を果たしており、BRCA1と強く連携して機能しています。BARD1遺伝子の変異は、特に乳がん卵巣がんのリスクを高め、遺伝性がん症候群の一部として考慮されることが多いです。遺伝子検査によって変異を確認し、適切な予防と治療が行われることが推奨されています。