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副甲状腺腫瘍関連遺伝子

MEN1(Multiple Endocrine Neoplasia Type 1)は、多発性内分泌腫瘍症1型と呼ばれる遺伝性疾患で、内分泌腺に腫瘍を形成しやすくなる病気です。この疾患は、MEN1遺伝子の変異が原因で起こります。MEN1遺伝子はがん抑制遺伝子であり、通常は腫瘍の発生を抑制する役割を果たしますが、この遺伝子に変異があると、内分泌腺に腫瘍が発生しやすくなります。

MEN1の特徴

MEN1は、内分泌系の複数の腺に腫瘍を発生させる疾患で、主に次のような内分泌腺が影響を受けます。

  1. 副甲状腺:
  • 副甲状腺機能亢進症が最も一般的な症状で、患者の約90%に見られます。
  • 副甲状腺に腫瘍が形成され、高カルシウム血症を引き起こします。
  • この症状により、骨密度の低下や腎結石のリスクが増加します。
  1. 膵臓:
  • 膵内分泌腫瘍(インスリノーマ、ガストリノーマなど)が発生し、インスリンやガストリンといったホルモンが過剰に分泌されることがあります。
  • これにより、低血糖潰瘍が引き起こされることがあります。
  1. 下垂体:
  • 下垂体腫瘍が発生し、プロラクチンや成長ホルモンなどのホルモンが過剰に分泌されることがあります。
  • プロラクチノーマ(プロラクチン分泌腫瘍)が多く、月経不順や乳汁漏出が起こることがあります。
  • 成長ホルモンが過剰分泌されると、先端巨大症巨人症になることもあります。

MEN1の原因

  • MEN1遺伝子の変異が原因です。MEN1は常染色体優性遺伝であり、親から遺伝する場合と新たに突然変異が発生する場合があります。
  • MEN1遺伝子は、腫瘍抑制遺伝子として、細胞の成長や分裂を制御しています。この遺伝子に変異が生じると、細胞の制御が失われ、腫瘍が発生しやすくなります。

MEN1の診断

MEN1は以下の方法で診断されます。

  • 血液検査: 高カルシウム血症やホルモン過剰分泌(プロラクチンやインスリンなど)の確認が行われます。
  • 画像検査: 腫瘍の存在を確認するために、CTやMRIなどの画像診断が用いられます。
  • 遺伝子検査: MEN1遺伝子の変異を確認するための遺伝子検査が行われることがあります。

MEN1の治療

MEN1の治療は、発生した腫瘍やホルモンの過剰分泌に応じて行われます。

  1. 手術:
  • 副甲状腺、膵臓、下垂体の腫瘍が大きくなる場合や、症状が顕著な場合には手術が必要です。副甲状腺腫瘍の場合、副甲状腺の摘出が行われます。
  1. 薬物療法:
  • ホルモンの過剰分泌に対しては、薬物療法が行われます。たとえば、インスリノーマに対する血糖値コントロール薬や、プロラクチノーマに対するドーパミン作動薬(カベルゴリンなど)が使用されます。
  1. 定期的なモニタリング:
  • MEN1は進行性の疾患であり、複数の腫瘍が時間とともに発生するため、定期的な血液検査や画像診断が推奨されます。

まとめ

MEN1は、内分泌腺に複数の腫瘍が発生する遺伝性疾患です。副甲状腺、膵臓、下垂体に腫瘍が発生し、ホルモンの異常分泌によるさまざまな症状が現れます。MEN1遺伝子の変異が原因であり、診断にはホルモン検査や遺伝子検査が必要です。治療は、手術や薬物療法で腫瘍の管理を行います。