PGT-A
◆PGT-Aとは
着床前遺伝子検査(PGT-A)は、体外受精後に受精卵の染色体異常を調べ、異常のない受精卵を選んで子宮に移植し、染色体数の異常による流産を防ぐ不妊治療の検査です。
初期にはFISH法が使われましたが、制限があり成功率に限界がありました。その後CGH法が導入され、マイクロアレイを使って24本の全染色体を調べることが可能になりました。最近ではNGSを使った手法も登場し、初期胚のモザイクも検出できるようになりました。PGT-Aは異数性の着床前遺伝子検査(PGS)とも呼ばれ、23の染色体ペアをスクリーニングし、IVFの研究者には貴重な情報を提供します。
不妊治療での失敗原因の一つとして、加齢に伴い異数性の発生可能性が高まります。染色体異常は最も多い不妊治療の原因であり、年齢が上がるほど割合が高まり、40歳では60%、43歳では80%以上の胚盤胞に報告されています。 染色体異常のある胚を移植すると、着床の困難、流産、胎児の発育停止などの影響が出る可能性があり、不妊治療を受ける患者はそれぞれの状況に悩みを抱えています。
「なぜPGT-Aの検査対象を限定するのか?」引用 https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/pgt-a_shiryo01.pdf
◆メリットとデメリット
メリット
- 流産リスク低減と妊娠率向上
移植前に胚の染色体数を評価し、異数性の胚盤胞があれば除外することで流産のリスクが減少。
正常な胚の移植により妊娠率が向上する。 - 低い流産率と時間の短縮
妊娠あたりの流産率が低下し、無駄な移植を減らし、妊娠までの時間を短縮できる可能性。 - 身体的、精神的負担の低減
流産に伴う身体的、精神的負担を低減できる可能性が高い。
デメリット
- 細胞採取に伴う胚へのダメージ
細胞の採取による胚盤胞へのダメージがあり、妊娠率の低下が懸念される。 - 初期胚移植不可と難しい移植
検査のためには胚盤胞までの培養が必要であり、初期胚移植ができなくなる。
異数性胚が多い場合、移植が難しく、精神的なダメージが考えられる。 - 損傷による着床困難や流産の可能性
胚生検時の損傷により着床困難や流産、児への影響が生じる可能性。 - 検査の不成功や移植可能な胚が不足
検査が不成功に終わる可能性や移植可能な胚が一つもない場合があり、誤判定率も考慮が必要。 - 異常の判定不可と流産リスク
3倍体、4倍体などの異常は判定できず、正常判定でも流産が発生する可能性。 - 妊娠率上昇が採卵率に影響
胚移植あたりの妊娠率が上昇しても、採卵あたりの妊娠率に有意差がない可能性。
◆検査方法
①受精後5日目の胚盤胞まで進みます。
②胚盤胞の段階では数十個の細胞に分裂しており、そのうちの一部(3~5個)の細胞を取り出して、DNAや染色体の検査を行います。
③検査中は胚の成長が進むため、凍結保存をして成長を停止させ、PGSの結果から正常な胚盤胞を特定し、解凍して移植が行われます。
「なぜPGT-Aの検査対象を限定するのか?」引用 https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/pgt-a_shiryo01.pdf