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NIPTの年齢制限について

NIPTの年齢制限について

これまでは出産予定日の年齢が35歳以上となる妊婦さんを、高年齢の妊婦さんと捉えた条件でした。
今回の記事では、NIPTを受けられる年齢や条件などの現状はどうなってきているのか、今後はどうなるのかを考えます。

変わりつつあるNIPTの条件

NIPT(新型出生前診断)を受けるにあたり、NIPT認可施設での検査が強く勧められています。

NIPT認可施設は92施設ありますが(平成30年7月13日時点)、認可を受けていない施設においてもNIPTを受けられると謳い、実際に多くの妊婦さんが無認可施設にて検査を受けています。

参照:「遺伝子・健康・社会」検討委員会

妊婦さんが安心・安全にNIPTを受け、そして結果をもとに夫婦でどのような判断を下すのか、その後のカウンセリングまで含めて万全のサポートを受けられるのか、懸念されています。

これに対し、認可施設の中では一部条件を変更しているところがあります。

NIPTを受ける条件のひとつに「35歳以上」とあり、これまでは出産予定日の年齢が35歳以上となる妊婦さんを、高年齢の妊婦さんと捉えた条件でした。

しかし、35歳以上という実年齢のみで検査を判断するのではなく、妊婦さんひとりひとりに対応するために、年齢に関しては「個別相談」の上、NIPTを実施するかどうか判断すると発表しています。

ここで気になるのが、高年齢妊婦は35歳というラインをなぜ今になって変更したのかということ。

NIPTを希望する妊婦さんについて、これまでの条件は以下のとおり。

  • 胎児超音波検査で、胎児が染色体数的異常である可能性がある人
  • 母体血清マーカー検査で、胎児が染色体数的異常である可能性がある人
  • 染色体数的異常のある子どもを妊娠したことがある人
  • 高年齢の人
  • 両親のいずれかが均衡型ロバートソン転座であり、胎児が13トリソミーまたは21トリソミーとなる可能性がある人

参照:公益社団法人 日本産科婦人科学会倫理委員会

上記条件の中にもある「高年齢の人」ですが、現在は35歳と定義されています。

しかし、1991年以前は30歳以上と現在よりも低い年齢で定義されていました。

参照:分娩時年齢の高年齢化 現状と問題点

上記は初産での定義ではありますが、それでもNIPTを受ける大きな条件である年齢について緩和されたことは、どのような意味があるのでしょうか。

NIPT認可施設の限界

晩婚化、初産を含めた出産の高年齢化により、妊娠・分娩への不安を抱えている妊婦さんは増えていると言わざるを得ません。

高齢妊娠の問題点としては、妊娠しにくくなる・流産率が上がってしまうほか、染色体異常の可能性が上がるということが挙げられます。

そこでNIPTを受ける妊婦さんも増えていますが、現状では日本産科婦人科学会の認定を受けている施設がまだまだ足りず、妊婦さんの需要に供給が追い付いていない状態だと言えます。

それを裏付けるのが、無認可施設で検査を受ける妊婦さんが後を絶たないこと。

認定を受けていない施設がNIPTを行っていることに対し、その施設の産婦人科医に対して懲戒処分を行ったこともありますが、それでもなお認可されていない施設でNIPTを受ける妊婦さんが後を絶ちません。

「現段階でのNIPTが限界を超えている」との旨がNIPTに関する指針にも記載されており、現状ではNIPTを希望する妊婦さんのニーズを満たせていない、さらに学会側も供給が追い付いていないことを公言しています。

参照:公益社団法人日本産科婦人科学会倫理委員会・母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針

認可施設で検査を受けた方がより信頼感もあり、適切なカウンセリングを受けられるとわかっていても、無認可施設で検査を受ける妊婦さんが多い理由。

たとえば、以下のことが考えられます。

  • 地域によってNIPT認可施設にばらつきがある
  • 無認可施設の誇大広告に引き込まれる
  • 無認可施設では年齢制限などがなく、妊婦さんがNIPTの意味を理解していない

まず、NIPT認可施設はばらつきがあり、地方では地域差が実状。

そのため、近場にあるからという理由や誇大広告に誘われた妊婦さんが無認可施設を訪れてしまいます。

そのような中、議論の的になっているのが「認可施設の条件」についてです。

NIPTを受ける条件、緩和が進むか

日本産科婦人科学会倫理委員会のNIPTに関する指針によると、NIPT認可施設の条件については以下のとおり。

  • 出生前診断(特に13・18・21番染色体の数的異常例)について十分な知識や診療経験をもつ産婦人科医師、小児科医師が常時勤務していること
  • 医師以外の認定遺伝カウンセラーもしくは遺伝看護専門看護師が在籍していることが望ましい
  • 上記産婦人科医、小児科医師の少なくともどちらかは、臨床遺伝専門医の資格を持っていること
  • 遺伝に関する専門が依頼を設置しており、上記医師およびカウンセラー・看護師が協力して診療を行っていること

上記に加え、さらにカウンセリングを行う体制が整っていることや、連携施設と密に連携できる体制が整っていることなどが条件となっています。

全国の産婦人科医の数や施設数は年々減少傾向にあり、その中でもNIPTを行う施設に着目すると、これだけの条件を満たす施設がまだまだ少ないと言えます。

参照:産婦人科医療体制と就労環境~施設情報調査2018より~

だからこそ、少しでも無認可施設へ流れてしまう妊婦さんを引き止めるために間口を広げるべく、妊婦さんの年齢という条件を緩和させたと考えられるでしょう。

NIPT検査を受けることができる妊婦さんの条件は前述していますが、5つある条件の中でも、年齢については最も条件緩和のハードルが低いもの。

条件を変更したNIPT認可施設のほか、今後他の施設でも同様の変更が行われていくのではと考えられます。

NIPTは、妊婦さんにかかる検査自体のリスクは非常に低いものの、結果次第では妊婦さんやその家族、そして胎児の一生を左右する検査に。

そのため、やはり適切なカウンセリングを受けられ、後悔しない選択ができるよう心身ともに万全のサポートを受けられる施設で検査をすべきです。

今後NIPT認定施設がさらに増えていくことはもちろんですが、今回のNIPT対象となる妊婦さんの条件変更のように、少しでも多くの妊婦さんが安心して検査を受けられるよう、さらなる条件緩和が進められる可能性があります。

条件を変更した施設でも、厳密に「●歳から検査が可能」というものではなく、個別に相談の上で対応するとのこと。

妊婦さん本人はもちろん、夫婦や家族で不安を抱えている場合はまずNIPTを理解するところから始めましょう。

そして、どのような結果が出ても後悔なく、適切な判断ができるよう万全のサポートを受けましょう。