乳がんに関連する遺伝子
1. ATM(ataxia-telangiectasia mutated)
- 役割: DNA損傷を感知し、細胞のDNA修復を助けるがん抑制遺伝子。
- 関連がん: 乳がん、リンパ腫、前立腺がん。ATM変異は、DNA修復能力の低下によりがんのリスクを高めます。
2. BARD1(BRCA1 associated RING domain 1)
- 役割: BRCA1と協力してDNA修復に関与。腫瘍抑制機能を持つ。
- 関連がん: 乳がん、卵巣がん。BRCA1との相互作用により、BARD1の変異はがんリスクを増加させます。
3. BRCA1(Breast Cancer 1)
- 役割: DNA修復、細胞増殖制御に関与する主要ながん抑制遺伝子。
- 関連がん: 乳がん、卵巣がん。BRCA1変異は、これらのがんにおいて高リスクをもたらします。
4. BRCA2(Breast Cancer 2)
- 役割: BRCA1と同様に、DNA修復に重要な役割を果たす。
- 関連がん: 乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん。BRCA2変異もがんリスクを高めます。
5. BRIP1(BRCA1 interacting protein C-terminal helicase 1)
- 役割: BRCA1とともにDNA修復に関与。ヘリカーゼという酵素で、DNAを巻き戻す機能を持つ。
- 関連がん: 卵巣がん、乳がん。BRIP1変異は、特に卵巣がんリスクを高めます。
6. CDH1(E-cadherin)
- 役割: 細胞接着分子として機能し、細胞の増殖やがん転移を抑制。
- 関連がん: 胃がん、乳がん(特に葉状がん)。CDH1変異は、細胞の異常な増殖とがんの転移を促進します。
7. CHEK2(Checkpoint kinase 2)
- 役割: DNA損傷を感知し、細胞周期の停止やアポトーシス(細胞死)を促進。
- 関連がん: 乳がん、結腸がん、前立腺がん。CHEK2変異はDNA修復不全を引き起こし、がんの発生リスクを高めます。
8. DICER1
- 役割: miRNAの生成を調節し、遺伝子の発現調整に重要。
- 関連がん: 卵巣がん、小児期の腫瘍。DICER1の異常は遺伝子発現の制御を妨げ、がんリスクを増加させます。
9. EPCAM(Epithelial Cell Adhesion Molecule)
- 役割: 細胞接着を促進し、細胞間コミュニケーションを助ける。
- 関連がん: 結腸がん(リンチ症候群)。EPCAM遺伝子の異常は細胞接着を損ない、がんの転移を引き起こすことがあります。
10. MLH1(MutL homolog 1)
- 役割: ミスマッチ修復(MMR)システムに関与し、DNA複製時のエラーを修正。
- 関連がん: 結腸がん(リンチ症候群)、子宮内膜がん。MLH1変異はDNA修復不全を引き起こし、がんリスクを高めます。
11. MRE11
- 役割: DNA二重鎖切断の修復に関与し、細胞のゲノム安定性を維持。
- 関連がん: 乳がん、リンパ腫。MRE11の変異は、DNA損傷修復に影響を与えます。
12. MSH2(MutS homolog 2)
- 役割: ミスマッチ修復システムの主要な要素で、DNAの損傷修復を担う。
- 関連がん: 結腸がん、子宮内膜がん。MSH2変異はリンチ症候群に関連し、がんリスクを増加させます。
13. MSH6
- 役割: MSH2と同様に、ミスマッチ修復に関与。
- 関連がん: 結腸がん、子宮内膜がん。MSH6変異はリンチ症候群に関連しています。
14. MUTYH(MutY homolog)
- 役割: DNA損傷修復に関与し、酸化ストレスによるDNA損傷を修正。
- 関連がん: 結腸がん(MUTYH関連ポリポーシス)。MUTYH変異は、結腸がんのリスクを高めます。
15. NBN(Nibrin)
- 役割: DNA二重鎖切断の修復を促進。
- 関連がん: 乳がん、リンパ腫。NBN変異は、DNA修復能力を低下させ、がんリスクを増加させます。
16. PALB2(Partner and Localizer of BRCA2)
- 役割: BRCA2と相互作用し、DNA修復を助ける。
- 関連がん: 乳がん、膵臓がん。PALB2変異は、BRCA2の機能に影響を与え、がんリスクを高めます。
17. PMS2(Postmeiotic segregation increased 2)
- 役割: ミスマッチ修復システムに関与。
- 関連がん: 結腸がん(リンチ症候群)。PMS2変異は、DNA修復不全を引き起こし、がんのリスクを増加させます。
18. POLD1
- 役割: DNA複製と修復を担う酵素の一部。
- 関連がん: 結腸がん、子宮がん。POLD1変異は、DNA複製エラーを引き起こし、がんの発生リスクを高めます。
19. POLE
- 役割: DNA複製時のエラーを修正する酵素の一部。
- 関連がん: 結腸がん、子宮がん。POLE変異はDNAの安定性を低下させ、がんリスクを高めます。
20. PTEN(Phosphatase and tensin homolog)
- 役割: 細胞成長を抑制し、細胞周期を制御するがん抑制遺伝子。
- 関連がん: 乳がん、子宮内膜がん、甲状腺がん。PTEN変異は、がん細胞の異常な増殖を引き起こします。
21. RAD50
- 役割: DNA二重鎖切断修復に関与。
- 関連がん: 乳がん、白血病。RAD50変異は、DNA修復不全を引き起こし、がんのリスクを増加させます。
22. RAD51C
- 役割: DNA修復に関与し、特にDNAの組換えを助ける。
- 関連がん: 乳がん、卵巣がん。RAD51C変異は、DNA修復能力を低下させ、がんリスクを増加させます。
### 23. RAD51D
役割: RAD51Cと同様に、DNA修復に関与。
- 関連がん: 乳がん、卵巣がん。RAD51D変異は、DNA修復不全を引き起こし、がんリスクを高めます。
24. SMARCA4
- 役割: 染色体のリモデリングに関与し、遺伝子発現を調節。
- 関連がん: 卵巣がん、肺がん。SMARCA4変異は、がんの進行を促進する可能性があります。
25. STK11(Serine/Threonine kinase 11)
- 役割: 細胞の成長とエネルギー代謝を調整するがん抑制遺伝子。
- 関連がん: 乳がん、子宮内膜がん、肺がん。STK11変異は、がん細胞の異常な増殖を引き起こします。
26. TP53(Tumor Protein 53)
- 役割: 細胞のDNA損傷を感知し、修復や細胞死を促進するがん抑制遺伝子。
- 関連がん: 乳がん、肺がん、結腸がん、白血病、その他多くのがん。TP53変異は、多くのがんに関連する最も一般的ながん抑制遺伝子の異常です。
これらの遺伝子変異は、DNA修復の失敗や細胞増殖の制御不全を引き起こし、がんの発生リスクを高める要因となります。